あなたのために。-光と影-
そして奴は私に何も聞かない。
あれだけ暴れたのに、どうして何も聞かない。
ただ何も言わずに奴は私の背中を摩る。
「…何も聞かないの?あんなことあって気になってるんでしょ?」
「…お前が言いたくないのなら、無理には聞かない」
私の耳元で囁いた奴の声は、どこか悲しそうで寂しそうだった。
そんなに悲しいの?
私のこと知ったって聞いたってただの雑音でしかないのに。
でも私の本名を知っているということは、大方私のこと知ってるんでしょ?
だからそんなに悲しそうな声してるの?
私の昔なんて忌々しいだけなのに。
でも何でだろう。
何でこんな奴に昔のこと話そうかななんて思ったんだろう。
ただ同情されたかったから?
慰めて欲しかったから?
ふ、そうかもね。