あなたのために。-光と影-




「…私今、寝ボケてるから変なこと言う。だから聞き流して」




ふっと自嘲した。
でも奴は何も言わずにいる。




それが何故だか嬉しいと思ったのは自分でも分からない。




そして私の口は自然と話し出した。




「前に百合って名乗ったのは偽名、本名は若月 小夜(わかつき さよ)。家族は両親と兄、あと双子の妹がいる。両親はいたの方が正しいかな。どこにでもいそうな家族でしょ?」




奴は頷きもせずに黙って聞いている。
寝てるのかなって思っても、私の背中を摩っているから起きてる。




「キャバクラで働くなんて考えたこともなかった、そんな"表"で明るく生きてきた。お父さんは小さな会社を経営してて、お金にも特に困ってなかった。お母さんも優しくて笑顔の絶えない家庭だった。




双子の妹は日向(ひなた)って言うの。髪色が明るくてお母さんみたいに明るい子。そんな普通の家庭で私は育った、小学生までは」




そう、私がこんな優しい家庭で育ったのは小学生まで。




それから家庭は崩れていった。




私が小5の時、お父さんは会社のある事業で社員のミスにより会社は大赤字になった。



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