あなたのために。-光と影-




私は奴から離れて、背中を向ける。
奴は私を抱き締めていた手を黙って解いた。




私は黒いワイシャツのボタンを取って、奴に背中を見せる。




「もうあまり跡は残ってないけど、お兄ちゃんにつけられた傷」




背中全体にはないけど、腰あたりに煙草の軽めの根性焼きや叩かれた跡が残っている。




「…私の身体は汚されたけど、日向は…日向だけは守れた。お兄ちゃんは私が汚れれば日向に害は加えなかった。それを考えたら、いつの間にかお兄ちゃんから逃げなくなってた。そして私も自分のお金のために自ら身体を汚すようになってた」




そして思った。
こうなったのは全て蓮条穣之介がお父さんにお金を貸したせいだと。




勝手に罪を擦りつけただけかもしれない。
でも誰かのせいにしないとやっていけなかった。




「…だからまず手始めにあなたを殺そう…と…」




震える手でワイシャツのボタンをつけていると、奴は後ろから抱き締めてきた。




フワリと奴の香りに包まれた。
奴も微かに震えているようだった。




どうしてあなたが震えているの?
極道の坊ちゃんなんてこんなの何とも思わないでしょ?




それとも同情?



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