あなたのために。-光と影-
【side 楓】
4年前だ、小夜を初めて見たのは。
関東一を争うほどの権力を持った極道一家「蓮条組」。
その若頭として俺は裏の世界で生きてきた。
金も地位もあって、女はいくらでも寄ってきた。
女は嫌いだ。
臭え香水つけて、似合ってもねぇ派手な服着て。
俺を見ればすぐに色目を使って寄ってきやがる。
だから性欲処理には使った。
女なんてそれくらいで丁度いい、そう思ってた。
ある日、親父が経営してるキャバクラに親父の代わりに行くことになった。
「ふんふんふ~♪酒いっぱい呑めるー!」
陽が上機嫌に鼻歌を歌っている。
何の曲かは知らねぇが。
俺には陽みたいに上機嫌にはなれねぇ。
女嫌いの俺が、女の集(たか)るキャバクラに行かなきゃいけねぇと考えただけで虫唾が走る。