あなたのために。-光と影-
ハッと我に返れば、奴はパッチリと目を開けて真っ直ぐに私を見てた。
離れようとしても奴の両手が腰にしっかりと回っているから動けない。
「…どこへ行くつもりだった?」
冷ややかな目で、昨日よりもトーンの落ちた声が響く。
昨日私との出会いのことを話していた時と、声と表情が全く逆。
奴の冷たさとは逆に私の心臓は高鳴る。
早く離れないと心臓の高鳴りを奴に気付かれてしまう。
「…顔を洗おうとしただけ。逃げようなんてしてない」
私も負けじと真っ直ぐに奴を見る。
奴の表情は変わらずそのまま。
でもやがて奴の目線は私の首筋にいく。