あなたのために。-光と影-




洗面所で歯磨きをして、居間に戻ると奴はパソコンで仕事をしていた。




ここまではいつもと変わらない日常。




でもここから私は大胆なことをしようと考えてしまった。




というか考えついてしまった。




昨日私の下らない寝言を聞いてくれたから、その…一応お礼というか何というか。




奴になんか言わなくていいかなとは思った。




でも人としてお礼言うところは言わないといけないなって思ったから。




例えそれが復讐相手だとしても。




居間で立ち止まって考えていたが、奴はパソコンと睨めっこしてて私には見向きもしない。




今なら逃げられそうだけど、奴がいる前では後が怖いからやめておこ。




恐る恐る奴の座ってるソファに近付く。




黒いソファに座って、足を上げ奴に背を向けて体育座りをする。




そして奴の腕に背中を密着させる。




カチカチと打っていたキーボードの音が途絶えた。




奴の手が止まったんだ。




「…き、昨日は下らない話聞いてくれて……その…ありがとう」




言えた。
最後のありがとうは小声になったけど、言ったことには言った。



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