あなたのために。-光と影-




しばらく奴から応答がない。




ま、言ったからもう言わないけど。




奴から背中を離そうとした時。




……え?何か揺れてる?




背中を伝って何かが揺れているのが分かった。




後ろを振り返ると、奴が肩を震わせて口元を押さえ笑いを堪えていた。




何で、何で笑ってるの?




私何にも可笑しなこと言ってないけど。




「…ハハハハハハッ!」




堪えきれず、奴の笑い声が部屋中に響く。




お礼を言ったよね、私。




それなのに何で笑われなきゃいけないわけ?




段々と湧き上がってきた怒り。




「…な、何笑ってるの!?ひ、ヒトがお礼言ったのに!」




何で怒ってるんだろ、私。
別に笑わせておけばいいのに。




でもすごくムシャクシャする。




確実に可笑しくなってる、私。
こんな奴に怒るなんて、奴に出会う前なら絶対になかった。




というかめったに人と関わらないから、怒ったの久し振りかもしれない。



< 95 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop