あなたのために。-光と影-
しばらく奴から応答がない。
ま、言ったからもう言わないけど。
奴から背中を離そうとした時。
……え?何か揺れてる?
背中を伝って何かが揺れているのが分かった。
後ろを振り返ると、奴が肩を震わせて口元を押さえ笑いを堪えていた。
何で、何で笑ってるの?
私何にも可笑しなこと言ってないけど。
「…ハハハハハハッ!」
堪えきれず、奴の笑い声が部屋中に響く。
お礼を言ったよね、私。
それなのに何で笑われなきゃいけないわけ?
段々と湧き上がってきた怒り。
「…な、何笑ってるの!?ひ、ヒトがお礼言ったのに!」
何で怒ってるんだろ、私。
別に笑わせておけばいいのに。
でもすごくムシャクシャする。
確実に可笑しくなってる、私。
こんな奴に怒るなんて、奴に出会う前なら絶対になかった。
というかめったに人と関わらないから、怒ったの久し振りかもしれない。