あなたのために。-光と影-
…というか、笑い過ぎじゃない?
私も怒るのはどうかしてるけど、さすがに笑い過ぎには苛立つ。
もうお礼言ったし、いいよね。
奴の耳障りな笑い声から逃げるように、立ち上がる。
「…え、きゃっ!」
するといきなりお腹に奴の腕が回され、後ろに引き寄せられる。
体勢が崩れて、気付けば私の体は奴の膝の上。
いつの間にか奴の笑いは治まっていて、笑い過ぎによって出てきた涙を拭っている。
「…礼を言われるのは鳥肌がたって嫌いだが、お前に言われる礼は悪くない」
「…っ!」
笑い過ぎて少し潤んだ、切れ長な瞳。
その瞳には私しか写してなくて。
この瞳、好きかもしれない。
一瞬でそう思ってしまった。
その瞳がゆっくりと横に動いた。
どうしたのかと奴の瞳が動いた方を見ると、私の左手が奴の目に向かって伸びていた。
わ、い、いつの間に!?
自分から手を伸ばして奴に触れようとするなんて。
慌てて手を引っ込める。
その引っ込めた手を奴は握り、もう一度伸ばした。