あなたのために。-光と影-
そして奴に握られた手はそのまま、奴の頬に当てられた。
「…なんだ、俺に見惚れたか」
フッと笑う調子に乗った奴の表情は、好きにはなれなかった。
というか、ムカついた。
「自惚れんな」と答える気にもなれなくて、ふいっと顔を逸らした。
それでも奴はクックックと笑っている。
どうしてあの時、奴の瞳が好きだと思ってしまったんだろう。
奴は私にとって大事な家族をバラバラにし、狂わせた蓮条穣之介の息子だというのに。
私の復讐の一人だというのに。
自分の考えていることが分から…な、い
。
まただ。
また急に眠気が襲ってきた。
今日こそは寝ないでおこうと思ったのに。
眠い目をこすっていると、奴の手が私の頭を引き寄せて、奴の硬い胸板にくっつく。
「…眠いなら寝ろ、無理はするな」
俺がずっとこうしててやる。
奴がそう言ってるかのように、頭を優しく撫でられる。
そんな優しくしないで。
余計眠くなるでしょ。
そんな反抗もままならず、私は昨日と同じく深い眠りに落ちた。