一口チョコレート
ザザァン…ザザァン…
家を飛び出した蘭がきたのは海。
お父さんと何度も遊びにきた海。
波はあの頃と変わらずに優しい音色を
響かせる。
蘭にとっての幸せの記憶はここにしかなかった。
「おと…う、さんっ!
なんで私をおいてったのっ!!」
ボロボロと涙をこぼしながら
泣き崩れる蘭。
「も、私の居場所、どこにも、ない。」
ポツリと呟いた。
始めて吐いた弱音。
誰にも聞かれるはずはない
「そんなこと言わないでよ」
はずだった。