愛してる。


その瞬間、不覚にも岸口部長の前で泣いてしまった。
だって、部長の手があまりにも優しすぎたから......






「え、え?どうしたの?俺、何かした?」




私は、慌てて首を振った。




「ち、違います!そうじゃなくて......」




「ん?」




「その...嬉しくて」



「え、何が?」



「えっと、手が優しかったので...」





そう言って顔を上げると、部長の顔がほんのり赤くなっていた。





え...あれ?
私なんか変なこと言ったかな?






「岸口部長?どうかしました?」





「いや、大丈夫。ごめんね、」





「私、何か変なこと言いましたか?それでしたら、すいませんでした。」





「違うんだ、人に優しいとか滅多に言われないからさ、ちょっと恥ずかしかっただけなんだ」





そう言った部長の顔は、さっきと同じでほんのり赤く染まっていた。
その表情を見て胸が高鳴った。






部長...その表情はズルいですよ。







このとき、私の中で小さな気持ちが芽生えた瞬間だった______。








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