大好きなんです
「た、ただの自己満足なので、その、霧谷くんが甘いのあまり得意じゃないのは知ってるから、よかったら家の人にでも……」
あたふたして言う萌に笑みがこぼれる。
「萌、お腹すいてる?」
「へ?えと…」
きょとん、とした顔で俺を見上げる。
……俺、今日どれだけ我慢しなきゃならないんだろう。
と萌を見て人知れず思ってしまった。
「んー…小腹がすいてる程度、かな?」
萌はもともと少食だからな……
まぁいいか。
「そっか。俺昼ご飯まだなんだ。だから萌がつくって?」
「あ、あたしが?」
驚いている萌ににこり、と笑顔を向ける。
「うん。萌の手料理食べたいし。そのあとにケーキ食べよ」
そう言うと、萌は嬉しそうに笑った。
………ほんと、これが無自覚だから怖い。
「ここキッチン。中のものは勝手に使っていいと思う」
「うん。食べたいものって、リクエストあるかな?」
手際よく冷蔵庫の中にケーキを入れている萌を見て、料理に慣れているんだな、と思った。
……自分の家のキッチンに萌がいて料理してくれるとか、なんか不思議だ。
って、そんなこと考えてる場合じゃないか。
昼ごはん……
本音を言うと一番食べたいのは萌なんだけどな。
「萌の作るものならなんでも」
俺はぎゅっと後ろから小さな体を抱きしめた。
「そ、そういうのが一番困るんです!」
顔を赤くして慌てる萌にキスをしたい衝動にかられるが我慢。
「じゃあパスタ食べたい」
「ぱ、ぱすた…わ、分かったから離れて……」
「なんで?」
からかうように言うと、さらに顔を赤くして、目も少し潤んでいく。
あぁー……ほんとにかわいすぎてヤバイ。
「な、なんでも!」
一生懸命俺の腕から抜け出そうとする萌に分からないように微笑んで、俺はリビングに向かった。