大好きなんです



「い、いいよ!霧谷くんは誕生日なんだし……そこに座って待ってて?」



と、言われても



「一人だとつまらないし」



さっきのお返しとばかりに上目使いで見ると、萌の頬がほんのり赤くなった。


効果てきめんだな。


で、でも、あの……と慌てる萌に、あとで一緒にしようと言うとしぶしぶ了解したみたいだった。



「じゃあ、ケーキ持ってくるね」



萌は一度キッチンに戻り、コーヒーとケーキをトレーに乗せてリビングに戻ってきた。



「これを萌が作ったの?」


「う、うん」



うわ……



「すごい……お店のみたい」



そう思えるぐらい萌の作ってきたケーキは綺麗で美味しそうだった。



「そうかな?」



照れたように笑う萌を横目で見ながら俺はいただきます、と言ってケーキを一口食べた。


ふわりと口の中に広がるほろ苦い味。


この香り、コーヒーか……



「……ど、どう、かな?」


「……おいしい」



甘いものがあまり得意じゃない俺でも素直においしいと感じた。



「ほんと?」


「あぁ。すごくおいしいよ」


「よ、よかったぁ」



安心したのかほっとため息をつく萌。



「萌も食べる?」


「へっ?」



きょとん、とする萌にくすりと笑みをこぼす。



「そういう顔してた」


「えぇっ!」



恥ずかしそうに頬を染める萌にフォークを差し出す。



「はい、口開けて」


「へ?い、いいよ霧谷くん、あたしは……」


「いいから、はい」



戸惑う萌にさらにフォークを差し出すとカアァ、と顔が赤くなっていく。



「き、霧谷くん……あの、その…これ……」


「どうしたの?」


「う、ぇと……」



食べようとしない萌を不思議に思ってからあぁ、そういうことか、と納得する。


萌らしいな。



「いらないの?」



にこり、と何も気づいてないように萌に問いかける。





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