大好きなんです



「……じゃあ、い、いただきます」



迷っていたみたいだけど、しばらくして萌はおずおずと口を開けた。



「おいしい?」


「う、うん」



ぱくりと食べたあとにその頬は微かに赤くなった。


意識してるな、と感じて、ついいじめたくなる。


きょとん、とした顔で見る萌に俺は手を伸ばす。


そのまま唇をなぞるように指を滑らす。


柔らかな感触にもっと触れたいと思うが、真っ赤になる萌を見てなんとか思いとどまる。



「間接キス、だね」



くすり、と笑みをこぼすと萌はあわあわと慌てる。



「き、霧谷くん…気づいて……」



その反応に俺は笑みを濃くする。



「慌ててる萌がかわいくて」



赤く染まった頬に潤んだ瞳で見つめられて、脳の奥が甘く痺れるような感覚に陥る。


あぁ…せっかくさっき我慢したのに……



「ごめんね」



我慢できそうもないみたいだ。


いろいろな意味のごめんを呟いて、萌に顔を近づける。


ちゅっとわざとリップ音をたてて俺はすぐに離れた。


じゃないと抑えられそうもなかったからな。



ぽかーん、としている萌を見て、笑みをこぼしてから俺は再びケーキを食べ始めた。



「ご馳走さま」


「……あ、はい」



はっとする萌に笑顔を向けるとカアァ、と染まっていく頬。


ほんと、かわいくて困る。



心の中で笑いながら皿を持ってキッチンに行くと、後ろからパタパタと足跡が聞こえた。



「き、霧谷くんいいよ!
あたしが……」


「このぐらいはさせてよ。俺の家のことだし」


「でも……」



納得していないような萌に顔を近づけると、その顔は赤くなる。



「それに、さっき言ったでしょ?一緒にしよ」


「う、うん……」



こくこくと頷く萌に俺は微笑む。





< 127 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop