大好きなんです
「じゃあ、あたしが洗うから、霧谷くんはすすいでもらってもいい、かな?」
「了解」
しばらくお互い無言になるが、萌が不思議そうな顔で俺を見るので何?と聞いてみる。
「え、と……霧谷くんの手際がいいな、と思って……
よくお手伝いしてるの?」
「あぁ」
萌が不思議に思うのも無理はないか。
陸真にも意外って言われたし。
「まぁ、後片付けだけね。料理は母さんがするんだけど、後片付けだけは俺か優がするんだ」
「優くんもするの?」
少し意外、と言って萌は笑みをこぼした。
「さきに部屋行ってて」
「うん」
階段を上がる萌を見て、お茶だけ用意して俺もすぐに部屋に向かう。
「お待たせ」
テーブルにお茶を置いてベッドに座る。
「……なんで萌、下に座ってるの?」
「え?だって…なんか悪いかなって……」
まぁ、上目使いの萌を見るのも俺としては嬉しいんだけど、せっかくだしもう少し触れていたい、というのも本音なわけで。
「萌、俺の前に来て?」
「?」
きょとん、と一瞬だけ不思議そうな顔になるが、萌は素直に俺の方に来た。
「霧谷くん?どうしたの?」
その質問には答えずに、俺はその体をくるりと反転させて引き寄せた。
ぽふん、と萌の体が俺の腕の中に収まる。
「え……えっ?あの……」
「ん?」
萌の腰のあたりに手を回して抱きしめると、萌の体がぴくりと揺れた。
ほんと、今改めて思うけど萌って小さいな。
陸真がここにいたら流がでかいんだろ、と言われそうだけど。
近くで感じる甘い萌の香りに、脳が支配されたような感覚になる。
「あ、あの……霧谷くん」
「なぁに、萌?」
「そ、その……離して下さい」
「なんで?」
俺はさらにぎゅうっと萌を抱きしる力を強くする。
「なんでって……は、恥ずかしい……です」