大好きなんです



しばらくモゴモゴと口を動かしていたゆっちゃんだけど、急に前を向いて歩き出した。



「早く行かないと遅刻するわよっ」


「え?ま、待ってよゆっちゃーんっ」



あたしは慌ててゆっちゃんの背中を追いかけた。













――――――――――――――――――
――――




「ゆ、ゆっちゃん……はぁ、速いよぉ…」



はぁ、はぁと、あたしは靴を履き替えながらゆっちゃんをじとっと見つめる。


ゆっちゃんとあたしの足の長さ違うんだから、ちょっとは考えてよぉ……!!



「あら。でも遅刻は免れたわよ?」


「うっ……」



その通りだから反論できない……


むむっ、としながらあたしはゆっちゃんと教室に向かった。



「おはよー」


「おはよう」


「おはよぉ」



みんなに挨拶をして、あたしとゆっちゃんは席に座る。


ちら、と視線を向けるとそこにはあたしの大好きな霧谷くんがいて、本に読んでいた。



おはよう、って言いたいなぁ……


でもなんだか恥ずかしくて、結局はいつも言えない。


うぅ……席が隣のときは言えたのにぃ。


ため息が出そうになったとき、ポケットからケータイの音がした。



「メール?」


「うん……こんな朝から誰だろう?」



受信ボックスを開いて、あたしはじわりと頬が熱くなるのを感じた。



「もしかして、霧谷?」


「なっ、なんで分かったのっ!?」



ゆっちゃんすごい!


え、エスパーだ……



「萌の顔見てれば分かるわよ。で、霧谷なんだって?」


「え、と……お、おはよう、って…」



自然と緩んでしまいそうな頬を抑えて、あたしはケータイを見つめる。


そんなあたしを見てゆっちゃんはくすくすと笑った。



ゆっちゃんには内緒にしたけど、実はおはようの他にも続きがあって……


でも、それは恥ずかしいから言わないでおこうかな。





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