大好きなんです
そっと扉を開けて霧谷くんの部屋に入る。
「本当だ……あったかい……」
霧谷くん、いつ暖房なんてつけたんだろう?
「あのときかな?」
着替えてくるって言ったとき。
霧谷くん、用意がいいなぁ。
荷物を置いてあたしはベッドの下にちょこん、と座る。
することもないのできょろきょろと周りを見渡す。
霧谷くんの部屋って、いつ見ても綺麗に整頓されてる。
掃除とか、自分でやってるのかな。
ぼーっとしているとガチャリと扉の音がした。
「霧谷くん……」
「また床に座ってる」
くすっ、と苦笑のような笑みをこぼす霧谷くんにちょっとだけしゅん、となってしまう。
だって、ベッドに座る、とか……なんか緊張するんだもん。
まぁいいけど、と柔らかい笑みを浮かべて霧谷くんはあたしの隣に座った。
「はい」
「あ、ありがとう」
手渡されたのはあったかいココア。
口に広がる甘さにほんわかと心があったまる。
「おいしい……」
「よかった」
霧谷くんはコーヒーを飲みながらくすっと笑った。
しばらくココアを飲みながら話をしていたけど……
「萌?」
「ん……」
うぅ……あったかくて眠くなってきちゃった……
「眠いの?」
そっと心に染みるような優しい霧谷くんの声が耳元で聞こえる。
「ん……ちょっと、だけ……」
そういえば、昨日、本を読んでいて少し寝るのが遅くなっちゃったっけ。
うとうとする中、ふわっと体が浮くような感覚がして。
そのあと温かいものに包まれた。
「おやすみ」
霧谷くんの声と頬に温もりを感じたあと、あたしの意識は消えていった。