大好きなんです



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「…んっ……」



あったかい……


無意識にその温かいものに摺りよると、ふわっと大好きな香りがした。


大好きで、どこか落ち着く香り。


柔らかい微睡みの中、そっと目を開く。



「……ほぇ?」



なんで、目の前に霧谷くんが……?


………夢?


うん。きっと夢だよね。


だって霧谷くんと一緒に寝るとか、あたしきっとドキドキして無理だもん。



夢なら、ちょっとぐらい甘えてもいいよね?


寝起きでぼんやりとする頭でそんなことを考える。


ぎゅっと霧谷くんの体に手を回して抱きつくと、更に感じる温もりに安心する。


霧谷くんもつられるように、ぎゅうっとあたしを抱きしめる。



ふふっ……夢の中ならあたしのお願い叶うみたいだなぁ。



そのまましばらくしていると、上から微かな声が聞こえた。



「…萌……?」



寝起き独特の掠れた声に心臓が跳ねる。


うぅ……夢の中だけどリアル過ぎるよぉ。


ちょっと恥ずかしいけど目線をあげてみると、少し眠そうな瞳をした霧谷くんがいた。



わぁ……寝起きでも霧谷くんはかっこいいなぁ。


こんな夢を見るなんて、霧谷くんだけには知られたくない……


でも、ちょっとだけ得した気分。



もうちょっとだけ……甘えてもいいかなぁ?


そっと霧谷くんに抱きついていた腕を離して、あたしは手を伸ばす。


そして霧谷くんの首に腕を絡めた。



ぎゅうっと抱きしめると、近くで感じる霧谷くんの香り。


やっぱり落ち着く……



ちょっとだけこの体勢に憧れてたりしたんだ。


恥ずかしいけど。


普段なら絶対にできないけど、夢の中ならではだよね。


なんだかおかしくてふふ、と笑うと、霧谷くんの体がピクッと揺れた。






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