大好きなんです
スッと近づいた霧谷くんにぎゅっと目を瞑る。
「それを聞いて、安心した」
くすくすという笑いと一緒に聞こえた艶っぽい声に、頭がくらっとしてしまった。
霧谷くんが離れた気配にそっと目を開くと、ゆるりと口元をあげた霧谷くんがそこにいた。
瞳の奥にゆらゆらと妖しい光が灯っている。
綺麗……
いつの間にか手に感じていた圧迫感が消えていた。
変わりに頬や額に柔らかい温もりを感じて。
髪をさらさらとすく感覚が心地よい。
すぐそばにある霧谷くんの顔から前髪が落ちて、あたしの顔にかかる。
「ふふ……霧谷くん、くすぐったい」
「そ?」
「うん」
なぜか二人でくすくすと笑いあう。
いいなぁ、こういうちょっとした時間。
幸せだなぁ……
「あっ」
「どうした?」
真っ直ぐに見下ろしている霧谷くんの綺麗な瞳に少しドキッ、としながらもあわあわと口を開く。
「霧谷くんっ、今何時?」
「あ。そっか、寝てたから……」
霧谷くんはそのままの体勢であたしの頭上に手を伸ばした。
ケータイ、そこに置いてたんだ……
「んー……もうすぐで六時」
「六時!?」
もうそんなに時間経って……!?
あたしどれだけ寝てたんだろう。
「ご、ごめんね?せっかく霧谷くんと一緒にいられる大切な時間だったのに……」
うぅ……夜更かしした自分を呪いたい。
しゅん、となるあたしに霧谷くんは優しく笑ってあたしの頭を撫でた。
「別に気にしなくていいよ。俺も寝てたし。
……いいこともあったし」
「え?最後何か言った?」
ボソッと聞こえたような……
霧谷くんはなんでもない、と言って笑った。
うーん、霧谷くんがそう言うならいっか。