大好きなんです
あぁ、これから帰らないといけないんだ……
外、寒いんだろうなぁ。
今いるここがあったかくて心地よいだけに、ここから出ることが躊躇われる。
「……出たくないなぁ」
「っ萌、今の……」
「へ?」
………はっ、心の声が!
霧谷くんが驚いたようにあたしを見ていて、ジワリ、と頬が熱くなるのを感じた。
「やっ、別に深い意味とかはなくて……!」
ただここが居心地がいいというか、それだけで……!!
慌てるあたしの上から、ちょっと強引な、でも優しい温もりが降ってきた。
一瞬だけ触れるような、優しいキス。
「き、霧谷くん……?」
なんか、顔が険しいような……
「はぁ……萌のせいだから」
「??」
きょとん、とした顔のあたしに霧谷くんはちょっと眉を寄せた。
「せっかく我慢してたのに、いつも萌の無自覚発言で無駄になる」
「が、我慢?無自覚?無駄?」
よく分からない単語に頭に"?"が並ぶ。
でもなんとなくあたしが悪い、のかな?
「ま、それが萌なんだけど」
くすり、と笑った霧谷くんの顔が近づいてきて、あたしはスッと目を閉じた。
「…んっ……」
優しい、優しいキス。
霧谷くんみたい……
そっと離れた唇に、ほんのちょっとだけ寂しさを感じたけど、あたしが思っていることを、目の前の霧谷くんに伝えたい。
「あたし、霧谷くんのこと、好きだから……
その……キスも……好き、だなぁ………」
なんでだろう。
今、伝えたくなってしまった。
言ったあとで恥ずかしくなっちゃったけど。
「っ、殺し文句」
「???」
なぜか余裕の無さそうな霧谷くんの顔に、少しだけ心配になる。