大好きなんです
いつの間にか制服のボタンが三つぐらい外されていて。
唇と舌の柔らかい感触が首から少しずつ下りてくる。
「いっ……」
鎖骨と胸の中間にきたとき、チクッ、と刺すような痛みを感じた。
「なっ……」
もしかして……
カアァ、と赤くなるあたしに霧谷くんは少し意地悪な視線を向ける。
そしてさっき痛みを感じたところに、わざとらしくちゅっと音をたててキスを落とした。
「キスマーク」
ややや、やっぱり……っ
あたふたするあたしを見る霧谷くんは、どことなく楽しそう。
うぅ……今日の霧谷くんは意地悪だ。
あたしは恥ずかしくて堪らなかったのに……
ジワリと少しだけ視界が滲む。
「嫌だった?」
こつん、とお互いのおでこをくっつける。
さらさらの黒髪から、綺麗な瞳があたしを見ている。
霧谷くんはちょっと困ったような笑みを浮かべていた。
その顔を見て、キスマークのことだけじゃなくて、その前の……も含まれているんだと分かって。
カアァ、と顔が熱くなる。
「う…と……やじゃなかった、けど……」
「けど?」
あたしの言葉を促すような優しい声。
心にスッと染み渡る声にちょっとほっとして、あたしはおずおずと口を開く。
「はっ、恥ずかしかった……です」
真っ赤になったあたしに、霧谷くんはかわいい、と笑ってもう一度キスをした。
「そろそろ帰ろっか」
送るよ、と優しく笑う霧谷くんに、あたしも自然と笑顔になって返事をする。
「その前に、萌はボタン留めないとね」
「あぅ……」
笑いを含んだ声で言う霧谷くんに、思わずじとっとした視線を向ける。
うぅ……霧谷くんが外したくせにぃ。
あたしを見てくすくすと笑いながら霧谷くんが体を起こしたとき、ガチャ、と部屋の扉が開いた。
あたしと霧谷くんの動きが止まる。