大好きなんです
「ありがとう、霧谷くん……」
「どういたしまして」
ぽんぽん、とあたしの頭を撫でたあと、霧谷くんは立ち上がった。
「さ、そろそろ下りようか」
「う、うん…」
あたしは差し出された手に自分の手を重ねた。
不安はまだあったけど、霧谷くんの手は優しくて、まるであたしの中の不安が溶けるみたいになくなっていった。
「大丈夫だとは思うけど、なんか言われても萌は気にしなくていいよ」
「うん……」
ぎゅっと握りしめた手が、ものすごくあったかい。
安心する。
そのまま手を引かれて、あたしは階段を霧谷くんと下りていく。
荷物は持っていたし、もう帰ればいいよって霧谷くんにも言われたけど。
でも、さすがに第一印象があれのまま帰るのは嫌だよぉ。
せめて挨拶だけはちゃんとしないと……!
開けるよ?と聞いてきた霧谷くんにこくりと頷く。
頑張れ、あたし……ちゃんと名前を言って、お付きあいさせてもらってますって言わなきゃ。
あと、いつもお世話になってますってことも!
ドキドキとうるさい心臓の音をごまかすように、あたしは少しだけ手の力を強くした。