大好きなんです
慌てて手を引っ込めると同時に、あたしの手の中にあったバッグが霧谷くんの手に移動した。
「えっ、じ、自分の荷物ぐらい持てるよ?」
「いいの」
「でも……」
あたしの荷物を霧谷くんに持たせちゃうって……
なんだか申し訳ないよ。
少しオロオロするあたしを見て、霧谷くんはくすりと笑みをこぼす。
「こういうときぐらい、彼氏らしいことしたいでしょ」
………ふっ、不意打ちだ!!
ポンッと赤くなったあたしを見て更に楽しそうに笑う霧谷くんを、うぅっと軽く睨む。
もう……本当に、朝から刺激が……っ
あたし、生きていられるのかな。
火照った顔を冷まそうとした手を、霧谷くんの手が包む。
ゆるりと絡められた手に、心臓がドキドキと音をたてた。
自然とお互い笑みを交わして、ゆっくりと歩きだす。
「萌、寒くない?」
「うん、平気だよ」
他愛もない会話をしながら、あたしと霧谷くんはゆっくりと歩く。
あとちょっとで霧谷くんの家に着きそう。
「本当に大丈夫?」
ふふっ……霧谷くん、心配しすぎだなぁ。
でもちょっと嬉しかったりして。
「大丈夫だよ。だって霧谷くんの手、温かいから」
きゅうっと少し手の力を強くして、えへへと笑う。
確かに冬だし、ちょっとは寒いけど、霧谷くんと一緒にいると心がぽかぽかして本当に温かい。
「あ、霧谷くんの家着いたよ」
「あー、うん」
どうしたんだろう?
あんまり嬉しくなさそうに見えるけど……気のせいかな。
「もう優子さんたち準備してるかな?」
「多分」
「えぇっ、じゃあ急がないと」
優子さん一人に任せるなんて申し訳ないよ。
霧谷くんの手を引っ張って少し急ごうと歩調を速める。
でも霧谷くんは逆にそこから動こうとしなくて。