大好きなんです



「き、霧谷くんは……や、優しいよ?」



そう。霧谷くんは凄く優しい。



「……ありきたりすぎて分からないんだけど」


「うっ、で、でも本当に優しいんだもん!」


「はいはい。分かった、分かった」



もぉー、自分から聞いておいて最後は適当なんだから。




ゆっちゃんと話していると朝のチャイムが鳴り、ゆっちゃんは自分の席に戻っていった。



「えー、欠席はいるかー?」



いつものように担任の小林先生が出欠をとる。


小林先生は生徒の間で人気者らしい。


確かにかっこいいけど……あたしはあまり興味ない。



「今日の連絡ー。もう6月になるし、そろそろ席替えをしようと思う。5限目にするから移動の準備しとけよー。以上」



そう言って小林先生は教室を後にした。


みんなは席替えが嬉しいのかざわざわと騒ぎ出す。



席替えか……ここの席霧谷くんが見られるから気に入ってたのに。


…って、あたし変態みたい。



はぁ、とあたしは一人ため息をついた。



この席とも午前中でお別れかぁー……


霧谷くんの見納めだなぁ…うぅー、本気で時間が止まってほしい。


あたしが霧谷くんを見る幸せな時間を奪わないでほしい!



……とは思っても、時間は無情にも流れていくわけで。













―――――――――――――――――
―――




「お前らー、出席順でくじ引いてけよー」



……はい。あっという間に5限目になりました。



うーん……せめて霧谷くんが前の方に行ってくれれば……



「おーい。次、桃園だぞー」


「は、はいっ」


「ちゃんと自分の順番ぐらい把握しとけよー」



くすくすとクラスメートに笑われながら、あたしはそそくさとくじを引いた。


うぅー……恥ずかしいよぉ。



「よし。じゃあ黒板に書かれた席に移動。くじの交換とかはナシだからなー」



小林先生の言葉で、みんなはがやがやと移動し始めた。






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