大好きなんです
確信
あの女子の名前は桃園 萌というらしい。
陸真に聞いたらと陸真と同じクラスだった。
「あー、それ桃ちゃんだろ?夕希ちゃんの幼馴染みでいつも一緒にいるし、結構有名だぜ?」
「ふーん…」
「…………」
「なんだよ」
じっと俺を見る陸真に俺は顔をしかめる。
「いや…流が女子に興味持つなんて珍しいな」
「……なんとなくだよ」
「ふーん」
そう。なんとなくだ。
なんとなく、気になっただけ。
あの笑顔が、忘れられないだけだ。
それから何度か、彼女……桃園さんを校舎で見かけた。
近くで見ると更にそのかわいらしさが印象に残った。
華奢な体、白い肌、綺麗な栗色の髪。
大きな瞳にぷっくりとした唇。
特別に美人、というわけではないが小動物みたいなかわいさがある。
相田程ではないが彼女も男子の中ではちょっとした人気らしい。
………イラつく。
よく分からない感情が俺の中で燻る。
いや、多分分かっている。
俺は…………
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「きりや〜ん、一緒に帰ろうぜ〜」
教室の前で陸真が手を振りながら俺を見ていた。
最近、陸真は学校で俺のことを"きりやん"と呼ぶ。
なんでも"流"と呼ぶと他の人が分からないから、らしい。
はっきり言ってどうでもいい。
ため息をつきたい気持ちをなんとか抑える。
今は人の目があるから迂闊に暴言も吐けない。
「すみません、陸真。今日は用事があるので僕は少し学校に残ります」
「えぇー、つまんねぇの。ま、仕方ねぇか」
じゃ、帰るわー、と言って陸真は教室を出ていった。