大好きなんです
あたしの席は……5番。
一番後ろの席だ!
ここからなら霧谷くんのこと見れるかなぁ。
淡い期待を胸に、あたしは5番の席に動く。
「あれ、ゆっちゃんだ」
「萌。ここの席なんだ」
「うん!」
ゆっちゃんはあたしの前の席だった。
やった!これからはもっといっぱい話せるや。
「隣、誰だろうね」
「さぁ?イケメンだといいけど」
「ゆっちゃん、相変わらずイケメン好きだねぇ」
「カッコイイやつは目の保養になるからね」
くすくすと笑いあっているとあたしの隣から微かな音がした。
「あ……」
神様。これは夢ですか?
「霧谷じゃん。何、ここの席なの?」
「はい。そうですが?」
そう言ってあたしの隣に座ったのは……霧谷くんだった。
「萌、よかったじゃん。……萌?」
ゆっちゃんが何か言っていたけど、今のあたしの頭の中はパニック状態で、ゆっちゃんの声が聞こえるはずもなく……
あたしの隣が、霧谷くん……?
これは夢?夢だよね?
「……痛い」
ぎゅう、と自分の頬をつねるとじんじんとした傷みが広がる。
……ということは、夢じゃない?
「萌、何してるの?」
「いや、ちょっと現実を確認しようかと」
「はぁ?」
呆れたようにゆっちゃんはあたしを見る。
うん。今は何を言われても気にしないよ。
「桃園さん?」
「は、はいっ」
「これからよろしくね?」
にこり、と見えている口元が微かに笑みの形を作る。
「よ、よろしくお願いします……」
痛いぐらいドキドキとなるあたしの心臓……
どうしよう……今、あたし、もの凄く幸せです。