大好きなんです



「おかえり」


「ただいま、霧谷くん」



隣の席で優しく笑う霧谷くん。



こうやって話せるだけでもあたしは幸せなんだけどなぁ…



「相田さんとどんな話をしていたんですか?」


「とっ、特に変なことは話してないよ」


「本当ですか?」


「えっ!?」


「目、泳いでますよ」



くすくすと霧谷くんは笑う。


でも、あの話はちょっとしにくいなぁ……



「顔、少し赤いですね」


「うっ……」



霧谷くんは気づくのがはやいと思う。



「二人が帰って来ましたよ」



振り返ってみると、峰くんとゆっちゃんはにやにやしながらあたしと霧谷くんを見ていた。



そのあと何を話していたのかゆっちゃんにも峰くんにも聞いたけど、何を聞いても二人は楽しそうに笑うだけで、何も答えてくれなかった。













――――――――――――――――――
――――




結局何も答えてくれないまま放課後になってしまった。



「萌、ちょっと待っててくれますか?陸真に呼ばれて……」


「うん。じゃあ教室にいるね」



帰る約束をしていたあたしと霧谷くんは、みんなが帰ってもまだ教室に残っていた。



「すみません。できるだけはやく戻ります」



申し訳なさそうな顔をして霧谷くんは教室を出た。



峰くんの用事、かな……どれぐらいかかるんだろう。


ぼーっ、と外を見ていると扉が開く音がした。


霧谷くんかな、と思い振り返ると、そこには帰ったはずのゆっちゃんがいた。



「ゆっちゃん、どうしたの?忘れ物?」



しっかり者のゆっちゃんにしては珍しい。



「違うわよ。萌を迎えにきたの」


「……へ?」



状況が理解できないまま、あたしはゆっちゃんに手を引かれずんずんと廊下を進む。





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