大好きなんです
「み、峰くん、最後に何て言ってたの?」
ドキドキする心臓を抑えてできるだけ普通に声をかける。
「放課後、教室で待っていてくれ、と。僕に何か用事があるみたいです」
「そ、そうなんだ……仲いいんだね」
「腐れ縁ですよ」
そう言って霧谷くんは微かに笑い読書を始めた。
霧谷くんと、普通に話せた……どうしよう。凄く嬉しい……
「……萌、顔」
「ご、ごめん。今は何も言わないで!」
ちゃんと自覚してるから!
鏡見なくても自分の顔が赤いことくらい分かってるから!
少しでも顔の熱を冷まそうとパタパタと手で仰ぐ。
「それより萌、今日委員会ってことは遅いのよね?」
「みたいだね…」
いつもはゆっちゃんと帰ってるけど、今日ゆっちゃんのお母さん夜勤らしくて、ゆっちゃんが妹たちのお世話をしないといけないらしい。
「ごめんね萌」
「ううん。気にしないで」
申し訳なさそうに謝るゆっちゃんに本当に大丈夫だから、と言って笑顔を見せる。
とは言ったものの……久しぶりに一人で帰るなぁ。
午後の授業はぼーっとしながら過ごしていたからか、あっという間に過ぎてしまった。
「じゃあまた明日。委員会、頑張って」
「うん。ゆっちゃんも頑張ってね」
ひらひらと手を振ってゆっちゃんを見送る。
あたしもさっさと行こうっと。
「桃園さん」
後ろから聞こえた柔らかい声に心臓がどきっと跳ねる。
「き、霧谷くん…」
ぎこちなく振り返ると霧谷くんがこちらを見ていた。
顔、赤くないかな……
「陸真に、早くしろよって、伝えておいてくれませんか?」
「う、うん。分かった…」
「ありがとう」
お礼を言って霧谷くんは笑う。
ど、どうしよう……あたし今絶対に顔赤い。
「じ、じゃあ行くね」
「はい。行ってらっしゃい」
あたしは霧谷くんに見送られて教室を後にした。