大っ嫌いにさよならを
すっかり茉莉奈のペースになってる気がしてならん。
もともと、俺とこいつは嫌い合っていたじゃないか!そうだ、これは何かの罠だ。
俺は捕まれていた腕をほどこうとした。しかし、そこにタイミング悪く奴らはやって来た。
「あっれー!?もしかして、そこの女子は茉莉奈か?」
鉄之助が俺たちに気づいて驚いた声を上げたかと思えば、俺と茉莉奈を交互に指をさしてニヤニヤ笑う。
「へー、とうとう二人はよりを戻すということなのか。いいじゃないか、いいじゃないか」
その隣にいた将は、変に納得したような表情を浮かべ、わざとらしく棒読みにそう言うと、何か企んでいるように怪しく笑う。
「なんでお前らが…って、違うから!勘違いするな!」
いつもは裏門から帰ったりしないくせに!なんて奴らだ。
俺は茉莉奈の手をほどいて走りだす。これで逃げられるつもりだったのだが、
「鉄之助、将!捕まえて!!」
我が耳を疑うような命令とともに「合点承知!」という威勢のいい返事と「今回だけだよ」という愉しげな返事が聞こえた。
天津茉莉奈も、鉄之助と将の同級生だったのだが、それ以前に俺の友人のはずだった。それも今日をもって終わりか…。
間もなく、俺は二人に取り押さえられた。