大っ嫌いにさよならを
「そっか…」
茉莉奈は、またうつむいてコーラを飲んだ。
ストローがズズ…と、静かに音をならした。焦げたポテトももうなくなっていた。
手持ち無沙汰にしていると、俺たちの所にシェイクを手にした鉄之助が来た。
「翔、好きな女の子なんていないだろ。下の名前で呼び合う女子だって茉莉奈以外いないくせに」
くそ野郎め。お前は今日からくそ之助だよ。てか、どんだけお前の耳は地獄耳なんだ?
「ほ、ほんと?鉄之助」
「おお!こいつ、女子と目も合わせらんねーくらい奥手なんだからな」
すっかり茉莉奈に飼い慣らされているくそ之助は、睨んでいる俺へ笑顔を向けた。
そして、こちらを見ていた将に目配せすると気持ち悪いほど軽い足取りでスキップして席へ戻っていった。
どうすんだよ!?俺の手の内、ばれたじゃねえか!
あの喧嘩の腹いせに嘘ついた、なんてますます俺の弱みを握られたようなもんだろ。
しかも、あんな思春期男子の心情を辱めること言いやがって…!
茉莉奈の意地の悪い笑顔が頭に浮かんで、俺はおそるおそるあいつを窺い見た。