大っ嫌いにさよならを

 店の外へ出て半ば走るように歩いていた俺の後ろから、

「おーい!待てってー!」

という、間抜けな声で鉄之助が追いかけてきていた。

 仕方なく止まった俺に鉄之助も立ち止まり、逡巡してから口を開いた。

「翔…まだ、茉莉奈のこと怒ってんのか?その、俺の…余計なお節介かもしんねーけどさ、茉莉奈は仲直りするつもりなんだと…」

「ああ、ほんとに余計なお節介だな。俺とあいつが仲直りして何の意味がある?」

 そもそも、茉莉奈が俺を好きになるなんて本当な訳がない。

 あいつも、これに懲りてあんな虚言を言わなくなるだろう。一生話しかけるなと言ったのは、茉莉奈自身だったしな。
 
 俺は、まだ何か言いたそうな鉄之助を置いて歩き出した。

 話すだけ無駄だ。鉄之助は情にもろい所があるから、あいつに何か言われて俺と茉莉奈の仲を取り持とうとしたのかもな。

 あいつはほんとに嫌なやつだ。仲直りなんてするものか。

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