大っ嫌いにさよならを

 これは世間で言う“小悪魔”だ。こいつは俺の知らない間にツンデレという名の小悪魔になり、俺を追い込むストーカーへとなっていたのだ。

 それも、恐ろしいほど憎らしく、悔しいほど可愛い天津茉莉奈。

「じゃあ、お母さんは夕ご飯の買い物に行ってくるからね。翔、茉莉奈ちゃんと仲良くするのよ?」

「…え゙!?」

 今度こそ本当に待ってくれ!こんな小悪魔と二人きりにするのか!?それでもあんたは母親か!?

「うふふ、行ってらっしゃい」

「あらー、可愛いわねぇ。翔なんて、もう何年行ってらっしゃいを言ってくれてないか…」

 母さんは悩ましげに俺と茉莉奈を見比べて、肩をすくめると買い物へと出掛けてしまった。

 なんちゅー親だ。今、心の声がはっきり聞こえたぞ。

 馬鹿息子みたいな出来損ないより、可愛いくてよくできた娘が欲しかった、と!

 シン、と静まり返ったリビング。

 玄関に目を向けたままだった俺は視線を感じて振り返った。

「ストーカーなんて、酷い言い方だと思わない?これでも、あなたの幼なじみなんですけど」

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