大っ嫌いにさよならを

 だが、中学生になると女子と男子の間に幾らか距離ができた。

 それは具体的な物ではなかったが、なんとなくできていた。

 俺とあいつも例外なく、だんだん距離ができていっていたんだとと思う。

 丁度、その時だった。ほんとに今思い出してもくだらない、些細な事がきっかけで大喧嘩したんだ。


『翔なんて大っ嫌い!!一生、話しかけてくんなっ!』





「翔…だよね?ひ、久しぶり」

 茉莉奈の声で我にかえった。あの頃よりも大人っぽい声で話しているのは不思議な感じがした。

 だが、自分も声変わりして背も大分伸びているのでお互い様なんだろうが。

 「…ああ」と、自分でも呆れるほど素っ気ない返事をして、ようやっとあいつから目をそらす。

 我ながら、意識しすぎだな。

 俺は無意識に右耳の後ろをかいて、気まずさを紛らわそうとしたが、あいつは何かを迷うように足元を見ては俺を窺い見るばっかりで沈黙が続く。

 あまりの気まずさに俺が帰ろうと歩きだそうとすると、茉莉奈が顔を上げた。

 何かと思って足を止める。…そして、とんでもない事を言いやがったんだ。



「私、翔が好きなの。付き合って」

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