大っ嫌いにさよならを
俺と将がやいやいと言い合っていると、側にいた鉄之助が俺の机を「バンッ!」と叩いた。
俺と将は口を閉じて、下を向いている鉄之助を見守る。鉄之助はわなわなと震える肩で呼吸をし、顔を上げて「なんで…」と呟く。
「え?鉄之助?」と二人で問いかければ鉄之助は突然…泣き叫んだ。
「なんで俺には彼女ができないんだよー!なんで翔にできて俺にできないんだよー!可笑しいだろうがよー!」
おい、鉄之助。お前、俺の事どんだけ見下していたんだ?対等ならまだしも、下の下ぐらいに見てただろ、その叫び方は。
「仕方ないんだ、鉄之助。お前と翔の土俵はそもそも違う。あいつと天津は幼なじみという最もせこい関係なのだよ。悲観することじゃない」
将まで何だよ、最もせこい関係って。
あいつと俺が幼なじみじゃなくても、きっと……きっと…?
あいつは俺の事を好きになるだろうか?あんな風に泣くぐらい、俺の事を。
「…翔?」
俺がぼーっとしていると、将が鉄之助を宥めてやりながら俺を見ていた。
「俺とあいつは幼なじみだ。その関係がなかったら、ただの元同級生だったら、関わることなんてなかったのかも。それに俺、今の茉莉奈の事が好きかどうか…」