大っ嫌いにさよならを
 〈 2 〉

 学校のグランドは、昼休みとあって生徒の騒ぐ声で元気が良い。今の俺には雑音にしか聞こえず、苛立ちは増すばかりだったが。

 俺はそんなイライラとモヤモヤする気持ちを抱えて、手の中にあったバスケットボールをゴールへと投げつけた。

 そんな八つ当たりのような投げ方は当然、ゴールの枠にボールが派手に当たっただけで入ることはなかった。

 その変わり、勢いの止まらないボールは地面に叩きつけられると側にいた男子めがけて跳ね返っていた。

「おわっつ!?…あっぶねーよ!気をつけやがれっ」

 てやんでい!とでも言いそうな江戸っ子気取りの男子…鉄之助(本名はたかゆき)が地団駄ふんで喚く。

 鉄之助のあだ名がついた経緯は至極簡単だ。江戸っ子っぽいから、ただそれだけ。(江戸っ子の定義は知らない)

 その横で、いかにも秀才らしく眼鏡をかけている将(たもつ)が迷惑そうに眉根をよせていた。

「お前の声、高いんだよ。オカマか?」

「なんだとテメェー!?ふざけんなよぉ!オカマってのはな、女みたいな男のことを言うんだ!俺は断じて…」

 鉄之助が顔を赤くさせて喚いているが、将はそれをまるで無視して、

「ところで、どうしたんだよ?いつもの翔らしくないな。何かあったか?」

と、落ちていたボールを拾い上げて俺にパスをしていた。

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