大っ嫌いにさよならを
俺も鉄之助を無視して、将からのパスを受け止めた。今度はゆっくりゴールへ向けて投げる。…やっぱりそれは入ってくれなかった。
「あいつに、会ったんだよ」
先ほどからグラウンドには、サッカーをする男子のかけ声が響きわたっていた。
その隅でバスケットゴールを囲むのは俺と鉄之助と将だけ。元バスケ部員だ。
部内のちょっとした騒動と、チームが弱すぎるのが原因で廃部になった。
この学校がサッカーに力を入れているらしいのも原因の一つではないか、と鉄之助は疑っている。
「あいつって?」
地面に転がっていたボールを拾って、将はそれを軽く投げた。ゴールのリングに触れることなくすっぽり入った。
さすがは元バスケ部の主将だ…将だけに。
うん、なかなか良いセンスだと思う。
依然としてわーわー、ギャーギャー、うるさい鉄之助。サッカーをしていた男子たちが、こちらを見て嘲笑っているのが遠く見えた。
「…茉莉奈だよ。チビなくせに気が強くて負けず嫌いだった、天津茉莉奈」
歯ぎしりさせんばかりに俺が言うと、鉄之助はやっと喚くのをやめた。
「茉莉奈って、中学の時にいたあのぽっちゃり女子の?」