大っ嫌いにさよならを

「可愛くなった天津に再会して、あの時、素直に謝っておけば良かった…ていう後悔を誤魔化す軽口?」

 将の言葉に、鉄之助は俺を真面目くさった顔で見つめてくる。

 俺は必死に首を横に振って全否定した。

「ち、ちげぇよ!だいたい、俺があいつに謝る必要ないだろ。あっちが悪いんだから。それなのに、あいつは…」


 “ 私、翔が好きなの。付き合って ”


 俺はうっかり話してしまうのをこらえた。危ない、危ない。

 そして、ちょうど良いタイミングで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「ほら、行くぞ。あいつの話なんかしてるから貴重な休み時間がなくなった」

 俺は将からの好奇心溢れる視線から逃げるように、校舎へ向かった。


「…その話をしだしたのは、お前だろ」

「ん、たもっち?何か言ったか?」

「その呼び方やめろ。…まぁ、翔はまだ俺らに話してないことがあるだろうなってな」

 俺は将の勘の良さを侮っていたなんて、この会話を聞いていないのだから知る余地もなかった。

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