蜜は甘いとは限らない。【完】




前に1度、寺島に頼んだ時は大変だった。





適当にこれをしてと頼んでみれば、意味が分かってなくて逆ギレされる。

運んでと渡したお皿は慎重に持っていたからなのか、いつも跨ぐ小さな段差に躓いて割るわ。





「……あれはいい迷惑だったわー」

「なにが」

「?!」




その時のことを思い出してため息をついたあたしの隣に、知らない間に寺島が立っていた。





「て、寺島。どうしたの」

「は?
運ぶんじゃないのかよ」

「い、いいから!
人に任せてアンタは座りなさいよ!」

「…んで俺に運ばせてくれないんだよ」





まぁ、いいけど。



慌てて背中を押してキッチンから出した寺島は拗ねて、ブツブツと文句を垂れながら食卓の方に向かった。




(アンタにだけは、絶対に渡さないから)





減らされては困る、ここにあるお皿を自分でも持って寺島の後を追った。




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