蜜は甘いとは限らない。【完】
さっきまでの赤らんだ頬は嘘のように消え、何も映らない目で俺を見る舞弥。
そんな舞弥の口から出たのは曖昧な言葉。
「チッ
そうやって、また話を逸らすのかよ」
逃げてばっかりで、俺には何一つ。話してくれない。
そんなに俺は頼りないか?
どんどん酷くなっていく舞弥の表情の色の無さに、思わず顔を歪める。
「…今度こそは、話すから」
顔を歪めた俺の顔はよっぽど酷かったのだろうか。
さっきの冷たい声と違い、柔らかい声で俺に話す。
だけど話す、そう言って俺に退けと言った舞弥は、本当に話してくれるのか?
逃げたりは、しないのか?
それでも、退かなければ話してくれそうにもない様子を見て、渋々言葉を信じたかのように体を退ける。
立ち上がった舞弥は大きく伸びをしてから俺に話をしてくれた。
……話の内容は、こうだ。
舞弥と葵の本当の苗字は嵐川で、瀬崎は母方の名字だということ。
そして今日は跡取りである舞弥だけが呼ばれて嵐川のパーティがあったこと。