蜜は甘いとは限らない。【完】
「…、柔らかかった」
想像していたものよりも柔らかい唇。
熱かったあいつの舌。
全てが忘れられなくて俺は暫く自分の唇を触っていた。
やっぱり、舞弥を俺のモノにしたい。
そのためにはこれからその為の準備を始めないと。
よいしょ、と重い体を起こしてポケットに入れていたケータイを出す。
液晶の画面を何回かタップすれぱ探していた人が見つかった。
「…。」
ピ、ピ、ピ、ピ、
相手のケータイに呼びかけている音が聞こえるケータイを耳にはあてず、そのまま手に持って眺める。
…遅い。
俺よりは忙しいかもしれないが、遅すぎる。
しばらく待っても出ない相手にだんだん苛立ちが募る。
プツ、
苛立ちのせいでガタガタと知らない間にしていた貧乏揺すり。
でも、相手が電話に出たことが分かれば自然に止まっていて。
「……もしもし」