蜜は甘いとは限らない。【完】
「……分かった」
スッと耳からケータイを離せば、通話はもう切れていて。
小さく舌打ちをしてベッドの上にケータイを投げた。
……今は、
ふと時間が気になって壁にかけてある時計に目を向けて見れば、もう既に日にちを跨いでいて。
「もう、寝ただろうな」
時間が分かるとなぜか急に重くなった瞼を擦ると、ふと思った。
…なんとなく、寝顔見たい。
そう思えば直ぐに部屋を出て、舞弥の部屋に向かう足。
起きてるだろうか、いや、俺としては寝ていて欲しいが。
ゾワゾワと底から湧き上がる好奇心のせいで、さっきまで少しあった眠気はなくなった。
ピタ。
ニヤける頬を隠して舞弥の部屋の前で止まる。
「……。」
静かに襖を開けてみれば、殺風景な部屋の真ん中にある、モノトーンのベッドが見えた。
その中心部分が膨らんでいるあたり、舞弥はもう寝ているらしい。