蜜は甘いとは限らない。【完】
「…舞弥?」
だけど、ちゃんと寝顔が見えないから、小さく声をかけながらそおっと布団を退ける。
「……ん、」
「!!」
ヤバい、布団を退けたことによって冷たい空気に晒された顔に違和感を感じたのか、顔を歪めて唸った。
吃驚して動きを止めていると、起きたかと思った舞弥はまたスヤスヤと寝息をついて寝始めた。
(焦った……)
そこで大きくため息を付くわけにもいかず、ぐっと喉まで来ていた息を止める。
……寝てたんなら、からかおうと思ったけど止めた。
気持ちよさそうに寝ている舞弥の顔を見て、気分が変わった俺は踵を返す。
が、
「……だれ、?」
「え…」
少し後ろを向いただけの俺の袖をクイッと引っ張られ、立ち止まる。
振り返ってみれば寝惚けて掴んでいるのか、眠ったままの舞弥。
チッ、着物で来るんじゃなかった。
思った以上に力を入れて掴んでいるせいで、動けない。