蜜は甘いとは限らない。【完】
チッ
世間の目を気にするこの男は小さく舌打ちをして、さっさと気味の悪いくらい白い車に乗り込んだ。
…テメェには灰色で充分だろ、クソ親父。
なんて、後ろから無理矢理運転手の奴に押されながら、俺も親父に続いて乗った。
「それで、何?」
「少しは上の者を敬え。
…用件は、後継者の話だ」
「それは、前から言ってる通り、」
「はっお前は自分の姉貴に跡を継がせるのか?」
「あ?」
何を、言ってる?
薄ら笑いを浮かべた男を強く睨む。
だって、俺も姉貴も断っているはず。
なのになんでっ
「舞弥は無理矢理で跡を継がせる。
男であるお前が跡を継ぐと言うまでな」
「なんで、男の俺だけが跡を継げと言われなければならない」
「嵐川は、代々男が跡を継ぐようになっている」
……なるほど。
女である姉貴には跡を継がせたくないけど、俺が継がないと言ったから姉貴は断れない立場にいるんだ。
俺が、人質になったようなものか。