蜜は甘いとは限らない。【完】
「用意出来ましたよ」
元々化粧をほとんどしないあたしは面倒くさくなって、しないまま里愛さんに顔を見せた。
「よし、行こう!!」
今日は買うものたくさんあるのよ!
なんて、イキイキとしてあたしの腕を取り、外に用意されたいつもの車に乗る。
今日の天気はあいにくの雨。
雨と言えば少しテンションが下がるものなのに、里愛さんは鼻歌を歌って窓の外を眺める。
「あ、今日はね、服とか靴とかアクセサリーとか、」
「…たくさん持ってるじゃないですか」
「何言ってるの!
季節が変わったじゃない?」
「去年のがあるでしょう?」
「そんなもの捨てたわよ」
どうもこの人は同じ物を2回も着れないそうだ。
…どうりで同じ服を2度見ることがないと思った。
そして今日もあたしはこの人のせいで疲れ果てる運命らしい。
はぁ、と溜め息をついて窓の外を見てみれば、もうすぐそこに目的のデパートは見えていて。
ずっと外を眺めたままの里絵さんの鼻息が荒くなった気がした。
…もう、帰りたい。