蜜は甘いとは限らない。【完】
「お待たせしました」
「ほんと、待ったわー」
「…どうぞ、ごゆっくり」
「(ぷ、プロだ)」
カチャ、と置かれたティーセットとコーヒー、ガトーショコラ。
場所が場所なだけあって、お皿やティーポットまで高そうなものばかり。
その丁寧に運ばれてきたガトーショコラにもうフォークを立てながら言う里愛さんに、店員の笑顔が歪むかと思えば最後まで笑顔で伝票を置いていった。
「あら、意外に美味しいわ。
このガトーショコラ」
「里愛さん、 ケーキ好きですもんね」
「もちろん!
甘いものは何でも好きよ」
「家の人達にも、買って帰りますか?」
「嫌よ」
「…そうですか」
美味しそうに頬張る里愛さんを見ながら、ハーブティーを一口。
うん、スッキリ。
知らない内に乾いていた喉も、潤うし。
程よい甘さと暖かさが心地いい。
「さて、そろそろ行きましょうか」
「相変わらず、早いですね。
もう少しゆっくりしませんか?」
「そんなことしてたら時間がなくなるわよ」