蜜は甘いとは限らない。【完】



今まで、家事をしてきたのはあたしよ?




そういえば、深く頭を下げられた。




「そうでしたか、失礼しました。
ですが、要らない。というわけにもいきません」

「なぜ?」

「旦那様の、」

「もういいわ」




結局、あたしはあの人の人形なのよ。

自分の会社を大きくするためだけに用意された、駒。



「分かった、もう何も言わない」

「申し訳ございません。

こういう場面で何かを言うのは間違いだとは分かっていますが、すみません。言わせていただきます」

「何?」

「明日、お見合いがあります」

「...まさかとは思うけど、あたしの?」




...。



無言は、肯定。ということね。



さっきから頭を下げたままの山中に、呆れて溜め息をつく。




「どうせ、いまさらあたしが拒否をしても無理矢理にでも連れて行くつもりなのでしょう?
それなら、今聞いてた方が気が楽だわ」

「...はい」



そういえば、ゆっくり顔を上げた。



「あたし、自分の部屋を見たい」

「お嬢様の部屋は、階段を上って直ぐ左にございます」



階段?





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