蜜は甘いとは限らない。【完】
失望
舞弥side
「初めまして、舞弥さん。
私は白神グループの白神 由梧(しらかみゆうご)です。
こっちは私の息子、絢梧(けんご)」
「...よろしくお願いします」
「...こちらこそ」
......息苦しいくらいに締められた帯。
痛いくらいに結われた髪。
濃く施された化粧。
...肌もお腹も苦しい状態で始まったのは、地獄のような沈黙。
ただ、唯一の救いは目の前に居る将来あたしの旦那になるであろう白神さんの顔が、想像していた以上に綺麗だったこと。
不細工だけは、少しだけでも拒否してやろうかと思った。
なんて、余裕でもないのに余裕のあるような考えを働かすあたし達の間にはなんともいえない空気が漂う。
「あ、初めまして。
嵐川コーポレーションの、嵐川 倭です。
こっちは、娘の舞弥。
それにしても、綺麗なお顔立ちですね」
「嵐川さんのお嬢さんほどでは、ないですがね」
じっと顔を見てくる絢梧さんの目から逸れたくて下を向くあたしの横で、媚び笑顔を振りまく父親。
まぁ、相手の父親も似たようなものなのだけど。