蜜は甘いとは限らない。【完】
こうまでするのだから、よほど自分たちにはたくさんの利益があるのでしょうね?
娘息子そっちのけで、相手の会社褒めちぎって。
自分のことを褒めて欲しくて仕方のない子供にしか見えないわ。
はぁ、と気付かれないように溜め息をつく。
「それじゃあ、そろそろ若いのを2人きりで話しをさせてやりましょうか?」
「そうですねー。
私たちがいると、話しにくいでしょうし」
(あんた等が喋り倒してたからでしょう)
そう言って2人でそそくさと出て行くのを、見送ったあたしたちの間には、相変わらずの沈黙が続いていた。
「...あの、」
「...。」
「...。」
「...。」
「あの」
「...なんなんだよ」
あ、聞こえてた。
1回目の呼びかけで反応しなかったから、聞こえてないのかと。
「いや、よくあんな親に付き合っていられるものだなと」
「それを言うのなら、お前もだろ」
言っておくが、俺はお前とよろしくする気は無いぞ。
そう一言言った絢梧さんに安心する。
「あ?」
「え?」
「良かったってなんだよ」
「あれ、聞こえてたの?
良かったって言うのはそのままの通り。
あたしに結婚したいという気持ちは無いわ」