蜜は甘いとは限らない。【完】
温かいのは嫌だ。
冷たいものでなくちゃ。
優しすぎる人は嫌だ。
ちゃんと怒ってくれる人でなくちゃ。
甘すぎる蜜は嫌だ。
少しビターな甘さでなくちゃ。
なんて、考えるあたしは我が侭な女?
我が侭で結構。
それが、あたしなのだから。
「...いたい、」
さっきまで寒いと感じるだけだったあたしの体は、薄着のせいか気付かない間に悲鳴を上げていて、手を見てみれば爪は青紫にまで変わっていて正直自分でも気持ちが悪い。
それに気付いてみれば震えていなかった体も小刻みに震えていて。
(...中に入ろう)
感覚が最早ない手足を動かして、少しでも暖かい室内へと慎重に逃げる。
途中、手が滑ったときはらしくもなく高い声で叫んでしまった。
あれは誰にも聞かせられない、否、聞かせたくない。
そろそろと室内に入ったあたしは感覚の無い足で立ち上がり、窓を閉める。
ずっとしていた風の音がぱたりとやんで、少し寂しさを感じた。