蜜は甘いとは限らない。【完】
絢梧に引き寄せられた肩を縮めて真横にいる絢梧を見上げる。
怒りを表情に表す葵も、あたしと同じように絢梧を見る。
「もちろん。
相手のことは聞いてなかったけどな」
「...ねぇ、昨日とキャラ違うくない?」
「これがホントの俺だし」
「あ、そ」
ひっでー。
相手にするのも面倒になったあたしが冷たくあしらえば、ケラケラと楽しそうに笑う絢梧。
昨日のクールな絢梧、頼むから帰ってきて。
「...姉貴は、それでいいわけ?」
笑う絢梧に腹が立って肩に回されている腕を振り払って抜け出せば、葵に肩を掴まれた。
それで、いい?
「いいわけ、ないでしょう?」
「え...」
「なに驚いてるのよ。
聞いたのは葵でしょう?」
「...そうだけど、嫌なら断れば、」
「断らない」
「っ、なんで!!」
「...秘密」
なんて、嘘。
断れないだけ。
まぁ、断れたとしても断るつもりがないのだけど。
大切な、我が弟のためなら自分の未来なんてどうでもいいわ。